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空家問題【第二章】鹿児島の空き家を「負動産」にしないために|売却・リノベーション・解体・補助金を一級建築士が解説

空家問題【第二章】鹿児島の空き家を「負動産」にしないために|売却・リノベーション・解体・補助金を一級建築士が解説

鹿児島の空き家対策で大切なのは、「空き家になってから考える」のではなく、まだ建物に価値が残っているうちに将来を考えることです。第一章では鹿児島県の空き家率20.5%という現状と、空き家を放置する危険性についてお伝えしました。

では実際に、

「親から実家を相続したけれど、誰も住む予定がない」

「築50年の家だけれど、リノベーションして使えるのだろうか?」

「建物を残して売るべきか、それとも解体して土地として売るべきか?」

「解体には補助金が使えるの?」

このような状況になったとき、何から始めればよいのでしょうか。

空き家対策で大切なのは、いきなり、

「売る」「壊す」

と決めてしまわないことです。まず考えていただきたいのは、

「残す・直す・貸す・売る・壊す」 という5つの選択肢です。

そして、それぞれを建物の状態、土地の条件、費用、相続、将来の活用方法まで含めて比較することが重要です。

今回は、鹿児島の空き家を「負動産」にしないために、具体的に何を調べ、どのように判断すればよいのかを、一級建築士の視点から解説します。

鹿児島の空き家対策|まず確認したい5つのこと

空き家を相続したり、所有することになったりしたら、最初に次の5項目を確認してください。

① 土地・建物の名義と相続登記

② 建物の劣化状況・耐震性・シロアリ被害

③ 道路との接道状況と再建築の可否

④ 売却価格・リノベーション費・解体費

⑤ 利用できる国・県・市町村の補助制度

この5つが分からないまま、「築50年だから壊そう」「思い出のある実家だから、とりあえずリフォームしよう」と判断することはおすすめできません。

特に空き家の場合、建物だけではなく「土地の条件」を調べることが非常に重要です。


解体する前に必ず「再建築できる土地なのか」を確認する

これは一級建築士として、ぜひ知っていただきたいポイントです。

現在そこに住宅が建っているからといって、

「壊した後も当然、新しい住宅を建てられる」とは限りません。

建築基準法上の道路との関係や接道条件などによっては、現在の住宅を解体した後、新しい建物を建築する際に大きな制約が生じる土地があります。

また鹿児島には、

・幅の狭い道路
・古い造成地
・高低差の大きな土地
・擁壁のある土地
・がけに近い土地

なども少なくありません。

建物だけでなく、道路・接道・擁壁・がけ・用途地域・都市計画まで確認する必要があります。

建物を解体してから、「ここには新しい住宅が建てられません」と分かっても元には戻せません。

だからこそ私は、

「解体業者へ依頼する前に、まず建築士に土地と建物を見てもらう」ことをおすすめします。

相続した空き家は「誰の名義なのか」を最初に確認

鹿児島の空き家問題と切り離せないのが相続です。

「父から実家を相続したと思っていたら、登記を調べると亡くなった祖父の名義のままだった」

ということもあります。

2024年4月1日から、相続登記は義務化されています。

相続によって不動産を取得したことを知った相続人は、原則として、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。

また、2024年4月以前に発生した相続で、まだ相続登記がされていない不動産についても対象となります。

詳しくは法務省の「相続登記の申請義務化について」で確認することができます。

名義が整理されていないと、「売却したい」「貸したい」「解体したい」

と思っても、すぐに手続きを進められないことがあります。

さらに相続が何世代にもわたれば、相続人の数が増え、権利関係はより複雑になります。

空き家対策では、

「この建物をどうするか」の前に、「現在、誰の不動産なのか」を確認することが大切です。


「築40年・50年=解体」ではありません

ここは、建築に携わる立場として特にお伝えしたいところです。

古い住宅だからといって、すぐに解体する必要があるとは限りません。

築40年、50年の住宅でも、構造材や基礎などを調査し、再生できる状態であれば、

耐震改修+断熱改修+リノベーション

によって、これからも安心して暮らせる住宅へ再生できる可能性があります。

例えば、

・耐震性能を高める
・断熱性能を高める
・窓を高性能化する
・水回りを一新する
・現在の生活に合わせて間取りを変更する
・段差をなくす
・古い柱や梁、建具を生かす

などです。

古い住宅には、現在では簡単には手に入らない立派な柱や梁、良質な無垢材、建具などが残されていることがあります。

そして、何よりその家には、家族が暮らしてきた時間や思い出があります。

だからこそ、「古いから壊す」のではなく、「残せる価値があるのかを調べてから判断する」

という考え方が大切だと思います。


一方で「解体した方がよい空き家」もあります

もちろん、すべての空き家をリノベーションすればよいわけでもありません。

例えば、

・長期間の雨漏りで柱や梁が腐っている
・シロアリ被害が構造部分まで広がっている
・建物が大きく傾いている
・基礎に重大な問題がある
・擁壁など土地側にも問題がある
・安全性を確保するための改修費が非常に高額になる
・今後、家族が利用する予定がない

このような住宅では、安全性や経済性を考えた結果、解体した方が合理的なケースがあります。

重要なのは、「築年数だけで判断しないこと」です。

建物を調査し、「あと何年使えるのか」「安全にするためには、いくら必要なのか」「改修した後に、どの程度の価値を生み出せるのか」

まで比較して判断することが大切です。

空き家は「売却するなら早めに」という考え方も大切

家族が今後住む予定がなく、賃貸として活用する予定もないのであれば、売却も重要な選択肢です。

ここでも時間が大きく関係します。建物がまだ健全であれば、「土地+中古住宅」

として売却できる可能性があります。しかし長期間放置して、

雨漏り。

腐朽。

シロアリ被害。

設備の故障。

庭木や雑草の繁茂。

などが進めば、

「古家付き土地」あるいは「解体を前提とした土地」としてしか評価されなくなることもあります。

「いつか売ろう」と思っているのであれば、

建物にまだ価値が残っているうちに、一度査定してみることも選択肢の一つです。

相続した空き家には「3,000万円特別控除」が使える場合も

相続した空き家を売却する場合、確認しておきたい国の制度があります。

一定の条件を満たす被相続人の居住用家屋とその敷地を売却した場合、

譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例 があります。

相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することなど、複数の条件があります。

また、建築時期や耐震性、被相続人の居住状況などによっても適用可否が変わります。

詳しい条件については、国土交通省の「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」で確認できます。

税金の制度は、「売ってから知った」では遅い場合があります。

空き家を売却する可能性がある場合は、不動産会社だけでなく、税理士などにも早めに相談することをおすすめします。

鹿児島県内では「空き家解体補助金」が使える場合があります

建物の老朽化が進み、再利用することが難しい場合には、解体という選択肢もあります。

そこで確認していただきたいのが、【空き家の解体補助金】です。

ただし注意したいのは、鹿児島県が県内一律で、すべての個人所有空き家へ同じ金額を補助しているわけではないということです。

基本的には、空き家が所在する市町村ごとの制度を確認します。

鹿児島県も、市町村の相談窓口や空き家バンク、管理、活用、解体などについて情報提供しています。

制度内容は市町村によって、

・補助率
・補助上限
・対象住宅
・危険度
・施工業者
・申請時期

などが違います。

そのため、「まず所在地の市町村へ相談する」ことが基本になります。


鹿児島市|危険空き家の解体費は最大30万円

鹿児島市では、一定の条件を満たす危険空き家について、解体費用の一部を補助しています。

2026年度の補助内容は、解体費用の3分の1/上限30万円です。

ただし、

「築50年だから」「建て替えたいから」という理由だけで補助対象になるわけではありません。

倒壊のおそれが著しいなど、一定の条件を満たす危険空き家であることが必要です。

ここで特に注意したいのが、先に解体工事を始めないこと。

補助を利用する場合には、工事前の事前協議や申請が必要になります。

したがって、「解体業者へ発注する前に鹿児島市へ相談する」ことが重要です。

詳細については、鹿児島市公式ホームページの「危険空き家の解体費に関する補助」で確認できます。


霧島市|住宅なら解体費の3分の1・最大30万円

霧島市にも、

「老朽危険空き家等解体撤去工事補助金」

があります。

2026年度は、

住宅:解体費の3分の1・上限30万円

併用住宅・倉庫等:解体費の3分の1・上限20万円

となっています。

さらに2026年度後期分については、

事前相談期限:2026年9月7日

申込期間:2026年8月20日~9月15日

となっています。

ただし、市内業者を利用することなど一定の条件があります。

また、

契約後・工事着手後に申請しても補助対象にならない

ため注意が必要です。

詳しくは、霧島市公式ホームページの「老朽危険空き家等解体撤去工事補助金」で確認してください。

補助金があるから「すぐ解体」ではありません

ここは非常に重要です。

例えば、「解体補助金が30万円出るから壊そう」という判断だけでは不十分です。

住宅を解体すると、土地に適用されていた住宅用地の固定資産税等の軽減措置がなくなり、土地の固定資産税が上がる場合があります。

さらに、

・解体費はいくらか
・補助金はいくら使えるか
・解体後の固定資産税はいくらになるか
・土地はいくらで売れるか
・新しい住宅を建築できるか
・駐車場など別用途に使えるか

まで確認する必要があります。

空き家対策では、「解体費が安いか高いか」だけではなく、解体した後まで考えることが重要なのです。


鹿児島の空き家対策は「建物の処分」ではなく「土地の未来」を考えること!

空き家対策というと、「この古い家をどうするか?」だけを考えがちです。

しかし本当に大切なのは、「この土地と建物を10年後、20年後にどう生かすのか?」という視点ではないでしょうか。

例えば、

リノベーションして家族が住む。

子ども世帯へ引き継ぐ。

賃貸住宅として活用する。

中古住宅として売却する。

店舗や事務所・民泊として活用する。

解体して新しい住宅を建てる。

更地として売却する。

場合によっては隣地と一体で活用する。

選択肢はいくつもあります。

つまり空き家対策とは、

「古い住宅を処分すること」だけではありません。

土地と建物に残っている価値を見つけ、「次にどうつなぐのか」を考えることだと思います。

「何もしない」という第6の選択肢を選ばない

空き家には、「残す・直す・貸す・売る・壊す」という5つの選択肢があります。

そして、もう一つあります。

それが、「何もしない」という第6の選択肢です。

しかし第一章でもお伝えしたように、この第6の選択肢こそ、できるだけ避けていただきたいと思います。

建物が健全なうちは、住める。貸せる。売れる。リノベーションできる。という可能性があります。

しかし何年も放置し、雨漏りや腐朽、シロアリ被害などが進めば、それらの選択肢が一つずつ失われます。

そして最後には、「解体するしかない」という状態になってしまうかもしれません。

空き家は、早く動けば動くほど、選択肢が多い。ここが非常に重要です。


空家問題【第二章】まとめ|「負動産」にするか「資産」としてつなぐか

第一章では、鹿児島県の空き家率20.5%という現状と、空き家を放置する危険性についてお伝えしました。

第二章では、「では、その空き家を具体的にどうすればいいのか?」について考えてきました。

まず確認するのは、所有者・建物・土地・価格・補助制度。

そのうえで、「残す・直す・貸す・売る・壊す」という5つの方法を比較する。

大切なのは、「解体ありき」でも「リノベーションありき」でもないことです。

建物の状態。土地の条件。家族の考え。相続。改修費。解体費。補助金。税金。

そして将来の資産価値。

これらを総合的に考え、その家と土地にとって最も良い方法を選ぶことが大切です。

空き家を地域の**「負動産」**にしてしまうのか。

それとも、新たな価値を生み出し、次の世代へつなぐ**「資産」**にするのか。

その分かれ道は、「まだ選択肢があるうちに動くこと」ではないでしょうか。

家族が長年暮らしてきた住宅だからこそ、壊す前に一度、その家にまだ残っている価値を見てほしい。

残す価値があれば再生する。貸せるのであれば活用する。売却するのであれば価値が残っているうちに動く。

そして、残すことが難しいのであれば、安全に解体し、その土地を次の世代へつないでいく。

それが、これから鹿児島で必要となる空き家対策だと考えています。

(株)ベルハウジング 一級建築士 松田英之

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国・県・自治体の公式情報

本文の各制度を確認する際は、以下の行政機関の公式情報をご確認ください。

法務省|相続登記の申請義務化について

国土交通省|相続した空き家を売却した場合の3,000万円特別控除

鹿児島県|空き家の適正管理・活用について

鹿児島市|危険空き家の解体費に関する補助

霧島市|老朽危険空き家等解体撤去工事補助金

※補助制度・補助額・申請期間等は2026年8月時点の公表情報を基にしています。制度は予算、受付状況、建物の状態等によって変更・終了する場合があります。契約・解体工事を行う前に、必ず建物所在地の市町村へ最新情報をご確認ください。

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