【設計の基本的な考え方】 一級建築士 松田英之
第一章
住まいは「間取り」ではなく、家族の人生を育てるプランである
私が住宅を設計するうえで、最も大切にしていることがあります。
それは、家を単なる「建物」として考えないことです。
家は、雨風をしのぎ、寝て、食べて、生活するためだけの箱ではありません。
そこには家族の会話があり、子どもの成長があり、夫婦の時間があり、親を想う時間があり、友人を招く楽しさがあり、何気ない毎日の積み重ねがあります。
つまり住宅とは、そこに住まう人の人生そのものを受け止め、育てていく場所です。
私は以前から、家づくりにおいて「住育」という考え方を大切にしています。
住育とは、文字通り「住みながら育つ」ということです。
家を設計し、形にするだけであれば、建築士や大工、プランナー、住宅営業など、ある程度経験があれば誰でもできるかもしれません。
しかし、それが単にお客様の要望を並べただけの「間取り図」で終わってしまってよいのでしょうか。
私は、そうではないと考えています。
本当に必要なのは、家族の今の要望を聞くだけではなく、その奥にある暮らし方、価値観、将来の変化、子どもたちの育ち方まで想像することです。
だから私は、あえて「間取り図」ではなく「プラン」と呼びます。
プランとは、部屋を並べることではありません。
家族の人生をどう育てるかを考えることです。
大きな家であっても、どこか寂しく、家族がバラバラになってしまう家があります。
一方で、小さな家であっても、自然と家族が集まり、会話が生まれ、あたたかく豊かな心が育つ家もあります。
家事がつらくなる家もあれば、家族みんなが自然と手伝いたくなる家もあります。
帰りたくない家もあれば、仕事が終わると早く帰りたくなる家もあります。
友人を呼びたくない家もあれば、思わず誰かに見せたくなる家もあります。
その違いは、単なる面積や設備の差ではありません。
そこに、暮らしを読む設計があるかどうかです。
子育ての時代。
子どもが個室を欲しがる時代。
子育てが終わり、夫婦二人の時間が増える時代。
子どもたちが孫を連れて帰ってくる時代。
親の介護が始まる時代。
そして、老後をゆっくり過ごす時代。
家族の暮らしは、必ず変化していきます。
だからこそ、家もその変化を受け止められるものでなければなりません。
今だけ便利な家ではなく、30年後、40年後にも「この家でよかった」と思える家。
そして、次の世代にも残したくなる家。
そこに、住宅の本当の価値があると考えています。
第二章
敷地・風土・性能を読み解き、美しく強い住まいをつくる
住宅設計でまず大切なのは、敷地を読むことです。
道路の向き、光の入り方、風の流れ、隣家との関係、車の停め方、玄関へのアプローチ、庭や植栽の配置、高低差、地盤、ライフライン。
これらを丁寧に読み解かなければ、本当にその土地に合った家は生まれません。
特に鹿児島で家をつくる私たちは、鹿児島の風土を深く理解する必要があります。
高温多湿、台風、火山灰、強い日差し、シロアリ、桜島の存在。
そして、冬場の寒暖差による健康リスクも無視できません。
だからこそ、ベルハウジングの家づくりでは、見た目の美しさだけでなく、性能も大切にします。
長期優良住宅、耐震等級3、高い断熱性能、気密性、メンテナンス性。
これらは単なるスペックではなく、家族の命と健康、そして将来の資産価値を守るための設計思想です。
しかし、性能だけで家は美しくなりません。
美しさとは何か。
私は、美しさとは「バランス」だと考えています。
建物と敷地のバランス。
外観と街並みのバランス。
光と影のバランス。
開く場所と閉じる場所のバランス。
木、石、鉄、ガラス、塗り壁など素材同士のバランス。
構造体の力強さと空間のやわらかさのバランス。
そして、暮らしやすさと美しさのバランス。
住宅は、外から見て美しいだけでは足りません。
中に入った時に、空気が心地よいこと。
窓から入る光がきれいであること。
風が抜けること。
素材に触れた時に安心できること。
家族の気配を感じながらも、一人になれる居場所があること。
そうした五感に響くものが重なった時、人は「この家は心地いい」と感じるのだと思います。
私が設計で大切にしているのは、構造体そのものの美しさです。
梁や柱、屋根の掛け方、軒の出、水平ライン、垂直ライン。
これらが整っている建物は、流行に左右されません。
無理に飾るのではなく、構造がそのまま美しい。
素材がそのまま美しい。
年月が経つほど味わいが増していく。
そういう家こそ、本当に長く愛される住宅だと思います。
ベルハウジングが目指す家は、「建てた瞬間が一番きれいな家」ではありません。
住み始めてから、家族の時間とともに少しずつ味わいを増し、思い出が積み重なり、ますます好きになっていく家です。
第三章 「建築家ら見た食育」
家族が集い、食を楽しみ、次の世代へ残したくなる家
もう一つ、私が大切にしているのが「食」と「だんらん」の場です。
キッチンは、単に料理を作る場所ではありません。
家族が自然と集まり、会話が生まれ、子どもたちが手伝いを覚え、食べることの大切さを学ぶ場所です。
「いただきます」という言葉には、命をいただく感謝があります。
食材を選び、つくり、食べ、片付ける。
その一連の行為の中に、子どもたちは多くのことを学びます。
だから、私はキッチンを家の中心として考えることが多くあります。
家族が集まりたくなるキッチン。
手伝いたくなるキッチン。
友人を招きたくなるキッチン。
そこには、単なる効率だけではない、暮らしの豊かさがあります。
設計とは、お客様の要望をそのまま形にするだけの仕事ではありません。
もちろん、要望はすべて丁寧に聞きます。
しかし私は、「全部聞いたうえで、あえてそのままにはしない」ことも大切だと考えています。
なぜなら、プロとして見える未来があるからです。
今の希望だけでつくると、数年後に使いにくくなることもあります。
逆に、少し違う角度から提案することで、想像以上に楽しい暮らしが生まれることもあります。
お客様の想いを受け止め、敷地を読み、風土を読み、家族の未来を読み、そこに建築家としての提案を重ねていく。
その対話の中から、本当にその家族らしい住まいが生まれます。
ベルハウジングの家づくりは、かっこいい家をつくることだけが目的ではありません。
美しく、強く、心地よく、健康で、永く愛される家をつくること。
そして、住む人の人生が少し豊かになるきっかけをつくること。
美しい家には、人が集まります。
人が集まる家には、笑顔が生まれます。
笑顔が生まれる家には、良い空気が育ちます。
その空気の中で、子どもたちの感性が育ち、家族の絆が育ち、暮らしそのものが育っていきます。
家は、完成した時がゴールではありません。
完成した時が、暮らしのスタートです。
住まう人が愛情を注ぎ、手を入れ、時間を重ね、家族の思い出とともに育てていく。
その過程こそが、本当の家づくりだと思います。
オーナー様にとって、楽しい人生を育む住宅。
美しく、素敵で、永く好きでいられる住宅。
そして、次の世代にも残したくなる住宅。
それが、一級建築士 松田英之、そしてベルハウジングが考える
「じぶんいろのいえ」 です。
