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【大型リノベーション事例】第一章:「誰も来なくて寂しい」築45年の古家が、家族の笑顔あふれる「五感の森・霧島山荘」へ

【大型リノベーション事例】築45年のが家族の集う「霧島山荘」に生まれ変わる

第一章 : ポツンと残された思い出の家と、「寂しさ」からのスタート

 

1. 「誰も来てくれなくなって寂しいんです」

「昔はね、孫たちも楽しく走り回っていたんですよ。でも最近は誰も来てくれなくなってしまって。なんだか、家が急に広くて、寂しいんです」

鹿児島県霧島市。雄大な霧島連山の麓、豊かな自然に囲まれたその場所で、お施主様であるお母様はぽつりとそう呟かれました。

その言葉には、長年過ごしてきた家への愛着と、時代の流れとともに少しずつ家族や仲間の足遠くなってしまった寂しさ、そして「本当はまたここで、みんなで笑顔で過ごしたい」という切実な願いが込められていました。

かつては家族の笑い声が絶えなかったはずの住まい。しかし、時の経過とともに家は傷み、現代の暮らしの快適さからは少しずつ遠ざかっていたのです。

「家族が集まる場所にしたい」 「また、子どもや孫たちが『帰りたい、行きたい』と思える家を取り戻したい」

このお母様の一言こそが、のちに全国最高峰の評価を受けることになる「霧島山荘」大型リノベーションプロジェクトのすべての始まりでした。

2. 厳しくも美しい、霧島という場所の過酷な現実

鹿児島県霧島市は、美しい森と清らかな水、そして豊かな温泉に恵まれた素晴らしい地域です。しかし、住まいを建てる環境として見ると、非常に過酷な一面を持っています。

寒暖差の激しさは、全国でもトップクラス。 夏は南国鹿児島らしい強い日差しと湿気が押し寄せ、気温は35℃を超える真夏日になります。一方で、冬の霧島盆地は氷点下まで冷え込むことが珍しくありません。年間を通した寒暖差は、実に40℃近くにも達します。

この激しい寒暖差に耐えかねたのが、築年数を重ねた旧来の木造住宅でした。

「4つの試練」

凍えるような寒さと、足元から忍び寄る湿気

 無断熱に近い昔ながらの構造は、冬になると外気と同じレベルまで室内温度が下がります。特に床下からの冷気と湿気が酷く、部屋のどこにいても底冷えがする状態でした。

光が届かない「暗さ」

 細かく部屋が仕切られた昔ながらの間取りは、日光が奥まで届かず、日中でも照明が必要なほど暗い空間を作り出していました。光が届かない空間は、空気がよどみ、湿気がこもっていました。

経年劣化による危険と老朽化

長年の風雨と湿気により、柱や基礎の老朽化が進行。さらに地盤沈下の影響で温泉を引いている浴室周辺の基礎が傾き始めており、安全面でも放置できない状態。小屋裏には小動物が住みつきフン等で衛生的にも良くない状況でした。

生活動線の分断

小さな部屋がいくつも連なる間取りは、現代の家族がゆったりと過ごすには不向きで、家族が同じ空間にいながらも孤立してしまう要因になっていました。

「寒いから長居できない」「暗くてなんだか落ち着かない」——。 家族が遠のいてしまった理由は、決して家族の情が薄れたからではありません。「建物そのものが、人が快適に集まれる環境ではなくなっていた」という、物理的な限界があったのです。

3. それでも「建て替え」を選ばなかった理由

これほど課題が山積みで、基礎まで傾きかけている築古住宅。 一般的にハウスメーカーや工務店に相談すれば、9割以上の確率でこう提案されるでしょう。

「ここまで古く痛んでるので、取り壊して『建て替え』た方が手っ取り早いですよ」

確かに、更地にしてゼロから新築を建てる方が、設計も施工もはるかにシンプルで計算が立ちます。解体してしまえば、古い構造の制約を受けることもありません。

しかし、ここで非常に大きな壁となるのが「資金面の負担」です。

膨らむ解体費用と、面積を縮小せざるを得ない新築の限界

家屋を取り壊してゼロから新築を建てるとなると、当然ながら「既存建物の解体・処分費用」が重くのしかかります。解体費だけでも数百万円単位の予算が吹き飛んでしまいます。

仮に予算の都合上、建築面積(坪数)を小さく縮小した新築を建てたとしても、解体費+新築工事費を合わせると多額の費用が発生します。

実際、今回のケースで「解体してコンパクトな新築を建てる計画」と「既存の構造を最大限活かすフルリノベーション」の試算を比較してみたところ、およそ700万円もの差額が生じることが判明しました。

私たちベルハウジングは技術屋です。ハウスメーカーとは違います。「建て替え」という安易な道を選びませんでした。 なぜなら、現地を調査し、お母様のお話を聞く中で、新築では絶対に手に入らない「2つの宝物」がこの家には眠っていると確信したからです。

① 庭に咲く、一本の満開の桜

その家のお庭には、長年この場所で家族の歴史を見守り続けてきた大きな桜の木がありました。春になれば見事な花を咲かせ、お母様やご家族が何より大切にされてきた象徴です。新築にするために敷地全体を整地してしまえば、この樹齢を重ねた美しい桜を傷つけたり、伐採せざるを得なくなる可能性がありました。

② 家に直接引き込まれた「天然温泉」

そしてもう一つ、霧島という恵まれた土地ならではの資源である「天然温泉」です。この家にコンコンと湧き出る温泉は、家族の旅の疲れを癒やし、憩いの時間を作り出してきた唯一無二の資産でした。しかし、浴室の基礎が傾いているからといって全てを壊してしまえば、この温泉文化ごと家から失われてしまう恐れがありました。

「家に刻まれた思い出と、そこでしか見られない景色。これらはどんなに最新の新築住宅を作っても、お金で買い直すことはできない。」

家は単なる「雨風をしのぐ箱」ではありません。 そこには家族が過ごした時間の記憶があり、歴史があり、その家でしか味わえない風情があります。

建て替えて過去を消し去るのではなく、歴史や価値をそのまま未来へ受け継ぐ。 古き良きものを残しながら、現代の技術で「安全」と「快適」を吹き込む。 これこそが、私たちが選択した「大型リノベーション」という挑戦でした。

4. コンセプトは「五感の森」霧島山荘  新たな物語の始まり
予算と価値の両面からリノベーションの方向性が決まったとき、私たちが掲げたテーマ。
それが「五感の森」です。

単に綺麗な部屋を作るのではなく、家の中にいながらにして霧島の豊かな自然と調和し、心も体も解放される住まいを目指しました。

見る(視覚): 室内から庭の一本桜や移ろい行く四季の風景を、まるで絵画のように美しく切り取る。

聴く(聴覚): 風が木々を揺らす音、鳥のさえずり、そして雨や雪の音も心地よくに耳を澄ます。

香る(嗅覚): 霧島の澄んだ空気と、贅沢に使用する無垢材(木)の爽やかな香り、自然の匂いに包まれる。

触れる(触覚): 素足で歩きたくなる木のぬくもり、大自然の恵みに触れる。

味わう(味覚): 家族や大切な仲間が集まり、豊かな自然の中で旬の味覚を美味しく囲む。温泉を利用して味わう。

この「五感の森」というコンセプトのもと、暗く寒かった築45年の住宅を、家族全員が「またあそこへ行きたい」と心から思える「霧島山荘」へと生まれ変わらせるための、大規模な設計・施工プロジェクトが動き出しました。

目指すのは、単なる見た目のリフォームではありません。
「家族の時間を再生する」という、真のリフォームの価値を求めてプロジェクトがスタートしました。

(第1章 終わり/第2章「劇的ビフォーアフター:五感を呼び覚ます設計と劇的変化」へ続く)

一級建築士 松田英之

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