住宅設計編 第四章 平屋の設計|一本の線から暮らしを描く手描きプラン
一本の線から、暮らしを描く 手描きで考える「国分の平屋」の設計
こんにちは。ベルハウジングの一級建築士・社長の松田です。
家づくりは、最初から完成した間取りがあるわけではありません。
敷地の形や道路の位置、太陽の動き、風の通り道、周囲の建物、車の置き方、庭のつくり方。そして、そこで暮らす家族がどのような毎日を送りたいのか。 さまざまな条件を一つずつ整理しながら、一本の線から住まいの形を考えていきます。
今回の動画では、霧島市国分に計画する平屋住宅を、私がA3用紙に手描きで組み立てていく様子をご紹介します。
■ 間取りを描く前に、敷地を読む
設計を始めるとき、絶対にやってはいけないのが「いきなり間取りを描くこと」です。最初に考えるべきは、部屋の広さではなく、敷地と周辺環境を「読み解く」ことです。
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道路がどちらにあり、車はどこから入るのか。
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隣家からの視線はどの方向から入るのか。
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方位を大事に南の光を大事にし、朝日や夕日はどこから差し込み、庭をどこにつくれば室内から美しい景色を眺められるのか。
建物だけを敷地の中に置いても、心地よい家にはなりません。車、建物、庭、植栽、アプローチを一体として考えることで、敷地全体に無理のない流れが生まれます。
私たちが設計の初めに最も大切にしている「CAR&TREE(配置計画)」という考え方も、ここにつながっています。毎日のストレスにならない車の位置(Car)を決め、敷地の中で一番良い場所に一本の木(Tree)を配置する。それが決まることで、初めて玄関への入り方や窓の位置、室内から見える景色が少しずつ見えてくるのです。
■ 部屋ではなく、暮らしのつながりを描く
間取りを考えるとき、「リビングは何畳」「寝室は何畳」と、パズルのように部屋を当てはめてしまいがちです。しかし、本当に大切なのは、部屋同士がどのようにつながり、家族がどのように動くかという「動線の線」を描くことです。
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玄関から入り、手を洗い、着替え、リビングへ向かう。
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料理をしながら庭や家族の様子が見える。
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洗濯し、干し、収納する動線が短くまとまっている。
こうした日常の動きを一つずつ線でつなぎながら、空間を整えていきます。
廊下のムダを省きつつも、家族の気配を感じられる場所と、静かに過ごせる場所を分ける。あえて天井を低く抑えることで落ち着きを生み出し、空間に「抜け感(開放的な視線)」と「停め感(落ち着く居場所)」をつくる。開放感だけを求めるのではなく、安心感とのバランスをとることが、長く心地よく暮らせる住まいにつながります。
■ 窓の位置は、外からではなく室内から考える
窓は、外観を整えるためだけのものではありません。室内に光を入れ、風を通し、外の景色を切り取るための大切な装置です。
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ソファに座ったときに何が見えるのか。
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ダイニングで食事をするときに、どこから光が入るのか。
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キッチンに立ったとき、庭の木や空が見えるのか。
窓の先に道路や隣家の窓しか見えなければ、結局カーテンを閉めたままになってしまいます。
だからこそ、窓だけを単独で決めるのではなく、庭や植栽と一緒に考えます。一本の木があることで、窓の先には一枚の絵のような季節の景色が生まれます。夏には葉が日差しを和らげ、冬には葉を落つけて室内に暖かな光を届ける。室内と庭を「一つの住環境」として考えることが、美しい住まいをつくるうえで欠かせません。
■ 平面と外観を同時に考える
動画の後半では、平面計画(間取り)だけでなく、建物の立面(フォルム)も描いています。
間取りが整っていても、屋根の形や軒の出、窓の高さ、建物全体の重心が整っていなければ、美しい家にはなりません。反対に、外観だけを先に美しく見せようとすると、室内が使いにくくなったり、窓の位置に無理が生じたりします。
平面と外観は、別々に考えるものではありません。私たちが用いる手法は、無理な形をつくるのではなく、シンプルな「ベース(構造体の箱)」に「下屋(げや)」を組み合わせるというものです。
内部の暮らしや構造の合理性が、そのまま外観の美しさにつながることが理想です。軒を低く深く出すことで、外と内をつなぐ「中間領域」が生まれ、建物は周囲の風景になじみ、室内には落ち着きが生まれます。水平に美しく伸びる屋根は、平屋らしい安定感をつくり、庭とのつながりを強くします。
■ 手で描くことで、本当に必要なものが見えてくる
現在は、設計の多くをコンピューターで行います。正確な図面を作成し、高い性能(耐震等級3や断熱など)や構造を確認するために、デジタル技術は欠かせません。
それでも、設計の最初の段階では、私は手で描くことを大切にしています。手を動かす速度と、頭の中で考える速度が近いからです。
一本の線を描きながら、「ここから光を入れたい」「この位置に木があれば景色が美しい」「屋根はこちらへ流した方が自然だ」と、全体を同時に空想しながら次の考えが生まれます。
手描きの線は、完成した設計図ではありません。そこには、迷いもあり、修正もあります。線を描いては消し、少しずつ全体のバランスを整えていく。その試行錯誤の中にこそ、設計者が何を大切にしているかが表れます。
■ 最後に
私たちベルハウジングが描いているのは、単なる建物の形ではありません。
車を停め、玄関へ歩き、家族が食卓を囲み、庭の木を眺め、光や風を感じながら過ごす。その家で生まれる、「家族の暮らしの風景」です。家族のプランニングです。
一本の線から始まり、平面となり、屋根がかかり、庭とつながっていく。 その丁寧な積み重ねによって、住まう人それぞれの普遍的な美しさや価値を持ち、住み継がれていく美しい家をつくりたいと考えています。
どんな小さなことでも構いません。まずはあなたの理想の暮らしをお聞かせください。
