【住宅設計編 第五章】二階建て住宅の設計 手書き図面から生まれる暮らしの風景 ―
一本の線から始まる物語
デジタル時代にあえて「手で描く」ということ
手書き図面だからこそ宿る「温もり」と「暮らしの風景」
■ 設計とは「知る・分かる」ではなく「身につける」ものである (建築家 秋山東一の言葉)
世の中には素晴らしい建築の知識や理論が溢れています。しかし、本を読んで「知った」「分かった」つもりになっても、いざ目の前の敷地に向き合ったとき、すぐに良い家が設計できるわけではありません。
設計とは、知る・分かるではなく、何度も何度も手を動かし、身体で「身につける」ものです。
だからこそ松田設計道場では、パソコン(CAD)に頼る前に、A3用紙一枚に手書きで「即日設計」を行う修練を重ねています。手を動かす速度は、頭で思考する速度に近く、線を引いては消し、また引く。
「知識を学ぶ『塾』ではなく、同じ図面に向き合い、共に手を動かし技を磨く『設計道場』なのです。」
その試行錯誤の中に、「ここから風を入れよう」「ここに木があればキッチンからの景色が美しい」といった、血の通ったアイデアが宿っていくのです。
私の手書き設計図面を3分で短縮しています。
■ 二階建て住宅の設計ルール:ベース(箱)と下屋の構成
平屋と異なり、二階建ての設計には特有の難しさがあります。それは「外観のプロポーション(美しさ)」と「構造の安定性」をどう両立させるかです。
必要な部屋数をただパズルのように積み上げると、凹凸の多い複雑な形になったり、のっぺりとした総二階の箱になってしまいがちです。私たちが二階建てを設計する際の基本は、極めてシンプルです。
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構造的に安定した四角い「ベース(箱)」を置く
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そこに「下屋(1階部分の屋根)」を組み合わせる
下屋を設けて深い軒を出すことで、建物全体の重心が下がり、街並みに対して美しい「水平ライン」が生まれます。また、この下屋の下は、雨の日でも濡れずに外と内をつなぐ心地よい「中間領域」となります。
特殊で難しい形をひねり出すのではなく、無駄を省いたシンプルな骨格から普遍的な美しさを引き出すのが、私たちの設計の基本です。
■ 見えない「力の伝わり方」を設計する
そして、二階建て住宅の設計において、絶対に妥協してはならないのが「直下率」です。
直下率とは、2階の柱や壁の真下(1階部分)に、どれだけ柱や壁があるかを示す割合のことです。どんなに「耐震等級3」の強固な壁を計算上配置しても、2階の重さを支える1階の柱や壁の位置がずれていれば、地震の際に力の伝わり方が歪み、建物に大きなダメージを与えてしまいます。
私たちは、壁直下率は60%以上、柱直下率は50%以上という厳しい基準を設けています。
間取りを描く前に、こうした「見えない構造の力」が素直に下へ伝わる美しい骨格(グリッド)を整えます。安全という「性能」と、暮らしやすさという「作法」。これらを高い次元でバランスさせることこそが、プロの設計者の役割なのです。
■ 上下階をつなぐ「抜け感」と「停め感」
二階建ての内部空間において重要なのは、1階と2階をどうつなぐかです。
ただ階段で移動するだけの分断された空間ではなく、私たちは「吹き抜け」を効果的に活用します。吹き抜けは、1階に明るい光を落とすだけでなく、1階のリビングと2階にいる家族の気配を緩やかにつなぐ「コミュニケーション」の装置になります。
ここで大切なのは、家全体をただ広く高くすれば良いわけではないということです。「抜け感」と「停め感」のメリハリが居心地の良さを生みます。
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【停め感】 重心が低くなることで、人は無意識に安心感を覚え、そこに留まりたくなります。
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【抜け感】 その隣接する場所に吹き抜けの開放感を設ける。
この対比が、空間に圧倒的な豊かさと奥行きをもたらすのです。
■ 設計とは、お客様の想像を超え「感動」を生むこと
家づくりにおいて、お客様からは「〇〇畳の部屋が欲しい」「こんな動線にしたい」とたくさんのご要望をいただきます。
私たちは、そのご要望を「全部聞きます。でも、そのまま図面にはしません」。
なぜなら、言われた通りに要望をパズルとしてはめ込んだだけの家は、決して感動を生まないからです。ご要望の奥底にある「本当はどう暮らしたいのか」という本質を読み解き、プロとしてそれを超える提案をすること。
耐震等級3やHEAT20 G2といった住宅性能の高さは、もはや当たり前の時代です。そこから一歩踏み出し、「この家、素敵だね」「早く家に帰りたいな」と心から思える居場所をつくること。
お客様の想像を超えたとき、初めてそこに「感動」が生まれるのです。
そうした思考の積み重ねと、一本の手書きの線から生まれました。
設計力という見えない価値が、どのようにして豊かな暮らしの風景である「じぶんいろのいえ」へと結実していくのか。今回の動画を通じて、私たちが家づくりにかける想いと情熱を、少しでも感じていただければ幸いです。
■ 最後に
私たちベルハウジングが描いているのは、単なる建物の形ではありません。
車を停め、玄関へ歩き、家族が食卓を囲み、庭の木を眺め、光や風を感じながら過ごす。その家で生まれる、「家族の暮らしの風景」です。家族のプランニングです。
一本の線から始まり、平面となり、屋根がかかり、庭とつながっていく。 その丁寧な積み重ねによって、住まう人それぞれの普遍的な美しさや価値を持ち、住み継がれていく美しい家をつくりたいと考えています。
どんな小さなことでも構いません。まずはあなたの理想の暮らしをお聞かせください。
一級建築士 松田英之
