空家問題【第一章】|鹿児島県空き家率20.5%、全国一位!放置が危険な理由を一級建築士が解説
鹿児島の空き家が増えています。鹿児島県の空き家率は20.5%に達し、住宅のおよそ5戸に1戸が空き家という状況です。
なぜ空き家を放置してはいけないのか、一級建築士の視点から詳しく解説します。
「親から実家を相続したけれど、誰も住む予定がない」
「今すぐ売るつもりもないので、とりあえずそのままにしている」
「子どもは県外にいるけれど、将来帰ってくるかもしれない」
鹿児島でも、このような住宅が増えています。
空き家というと、過疎地域や山間部だけの問題と思われがちです。
しかし現在では、鹿児島市などでも、高齢化、施設への入居、人口減少、相続、子どもの県外転出などによって空き家が増えています。
そして空き家対策で、最も避けたいこと。
それは、
「何もしないまま放置すること」です。
今回は鹿児島県の空き家の現状と、なぜ空き家を放置してはいけないのか、そして国や鹿児島県がどのような対策を進めているのかを、建築の視点から考えてみたいと思います。
鹿児島県では住宅の「約5戸に1戸」が空き家
まず知っていただきたいのが、鹿児島県の空き家の多さです。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%となっています。
一方、鹿児島県では、
総住宅数:約89万9,600戸
空き家:約18万4,200戸
空き家率:20.5%
となっています。つまり鹿児島県では、
住宅のおよそ5戸に1戸が空き家 という状況です。
さらに、2018年には19.0%だった空き家率が、2023年には20.5%へ上昇しています。
全国平均13.8%と比べても、鹿児島の空き家問題が非常に深刻であることが分かります。
本当に問題なのは「これからどうするか決まっていない空き家」
一口に空き家といっても、すべて同じではありません。
例えば、
・入居者を募集している賃貸住宅
・売却するために買い手を募集している住宅
・別荘などの二次的住宅
この住宅も、統計上は空き家に含まれています。
その中でも特に問題になるのが、
「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」 です。
鹿児島県では、この空き家が約12万2,200戸あります。
県内の空き家約18万4,200戸のうち、約66%を占める計算です。つまり鹿児島では、
「誰も住んでいない。売る予定も貸す予定もない。そして、これからどうするのかも決まっていない家」
が非常に多いのです。
親から相続した実家を、
「いつか考えればいい」「思い出があるから、とりあえず残しておこう」
と、そのままにしているケースも少なくありません。
しかし、所有者が結論を先送りしている間も、建物の劣化は進んでいきます。
なぜ人が住まなくなると、家は傷みやすいのか
住宅は、人が暮らしていることで、維持されています。
窓を開けて換気する。水道を使う。掃除をする。庭の草木を手入れする。雨漏りや設備の異常に気づく。
こうした日常生活そのものが、住宅を守っています。
ところが空き家になると、換気も通水も行われなくなり、不具合が発生しても気づく人がいません。
特に鹿児島は、高温多湿・台風・豪雨・シロアリ・桜島の降灰
など、住宅にとって厳しい環境です。
空き家を長期間放置すると、
・屋根や外壁の劣化
・雨漏り
・柱、梁、床下の腐朽
・シロアリ被害
・雑草や樹木の繁茂
・ねずみ、害虫、小動物の侵入
・不法投棄
・不法侵入
・台風による屋根材や外壁材の飛散
・地震による倒壊
などにつながる可能性があります。
鹿児島県も、適切に管理されない空き家では、外壁材や屋根材の落下、家屋の倒壊、ごみの不法投棄、害虫の繁殖、雑草の繁茂などが発生し、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼすと注意を呼びかけています。
「誰も住んでいないから大丈夫」ではありません
空き家について、もう一つ忘れてはいけないのが、
所有者には管理責任がある! ということです。
例えば台風で屋根材が飛び、隣家や車を傷つけた。
老朽化したブロック塀が道路側へ倒れた。
外壁の一部が落下して通行人に被害を与えた。
こうした事故が起きれば、所有者が責任を問われる可能性があります。
また、草木が隣地へ越境したり、害虫が発生したり、ごみを不法投棄されたりすれば、近隣トラブルにもつながります。
空き家は、「誰も住んでいないから管理しなくてよい家」ではありません。
むしろ、
「誰も住んでいないからこそ、意識して管理しなければならない家」
なのです。
国の方針も「危険になってから」から「危険になる前」へ
国の空き家対策も変わってきています。これまでは、倒壊のおそれがあるなど周辺へ著しい悪影響を及ぼす住宅を、
「特定空家等」
として、市町村が指導・勧告・命令などを行う仕組みが中心でした。
しかし2023年12月に改正空家法が施行され、新たに、
「管理不全空家等」
という制度が導入されました。現在は「特定空家」になるほど危険ではなくても、
「このまま管理されなければ、将来特定空家になるおそれがある住宅」
について、市町村が早い段階から指導や勧告を行えるようになったのです。
つまり国の空き家政策は、「危険になってから対処する」から、
「危険になる前に管理・活用する」方向へ変わってきています。
空き家を放置すると「固定資産税」にも影響する?
「建物を壊すと土地の固定資産税が上がるから、古くても残しておいた方がいい」
こうした話を聞いたことがある方も多いと思います。
住宅が建っている土地には「住宅用地特例」があり、200㎡以下の小規模住宅用地では、固定資産税の課税標準が原則として6分の1に軽減されています。
しかし現在は、管理不全空家等や特定空家等として市町村から指導を受け、それに従わず勧告を受けた場合、この住宅用地特例の対象から外れる可能性があります。
つまり、「固定資産税を安くするために、とりあえず古い家を残しておく」
という考えだけで放置することには注意が必要です。
ただし、通常の住宅を解体した場合にも住宅用地特例がなくなるため、解体前には税金だけでなく、その土地を今後どう活用するのかまで含めて検討することが大切です。
鹿児島では「空き家になる前」に家族で話しておきたい
これから鹿児島で特に重要になるのが、
「空き家になってから考えるのではなく、空き家になる前から考える」 ことです。
例えば親が元気なうちに、
「この家を将来誰が相続するのか」
「子どもが住む可能性はあるのか」
「住まないのであれば売却するのか」
「賃貸住宅として活用できないか」
「リノベーションして次の世代へ残すのか」
を話し合っておく。
これだけでも将来の空き家問題を減らせる可能性があります。
相続してから兄弟姉妹で相談しようとしても、意見がまとまらず、その間に何年間も放置されてしまうケースがあります。
その数年間で雨漏りやシロアリ被害が進み、
「本来なら再生できた住宅が、解体するしかない住宅になってしまう」 こともあります。
空き家は「何もしない」が一番危険
鹿児島県の空き家率は20.5%。
住宅のおよそ5戸に1戸が空き家という時代です。しかし、本当に怖いのは、
「空き家になること」そのものではありません。
最も避けたいのは、
何年も何も決めず、何もしないまま放置することです。
建物がまだ健全なうちなら、住む。貸す。売る。リノベーションする。
という選択肢があります。
しかし長期間放置して雨漏り、腐朽、シロアリ被害が進めば、選択肢はどんどん少なくなります。
空き家を地域の「負動産」にしてしまうのか。
それとも、もう一度価値を生み出す「資産」として次の世代へつなぐのか。
その分かれ道は、「早い段階で、この家をどうするのか考えること」ではないでしょうか。
まずは家族で、「この家を将来どうする?」と話してみる。
それが空き家対策の第一歩です。
次回・第二章では「具体的にどうする?」を解説します
【第二章】鹿児島の空き家を「負動産」にしないために
・相続登記はどうする?
・鹿児島県内の空き家解体補助金は?
・鹿児島市では最大いくら補助される?
・古い家は解体すべき?リノベーションすべき?
・売却するならいつがいい?
・解体前に確認すべき「再建築できない土地」とは?
など、「では、実際に何をすればいいのか」
を具体的に解説します。
※統計数値は総務省「令和5年住宅・土地統計調査」および鹿児島県公表資料に基づいています。
一級建築士 松田英之
