住宅設計編 第三章 美しさは「引き算」から生まれる――窓・構造・線を整え、愛着を紡ぐ
住宅設計編 第三章
美しさは細部に宿る【窓・構造・線を整える設計】
前章では、屋根の架け方や柱・梁の組み方など、住宅の美しさを支える「構造体」についてお伝えしました。 しかし、美しい骨格をつくっただけで、美しい家が完成するわけではありません。
その骨格に対して、窓をどこに配置するのか。どの梁を見せ、どの部分を隠すのか。外観に現れる線を、どのように整理するのか。こうした細かな判断の積み重ねが、住宅の佇まいを大きく左右します。
美しさは、完成直前に装飾を加えてつくるものではありません。構造、窓、設備、照明、素材、家具、庭までを、設計の初期段階から一体として考えることで初めて生まれるものです。
7.窓の配置計画
外観の水平ラインと室内の景色を同時に整える
窓は、単に光を入れ、風を通すためだけの部品ではありません。室内から見れば外の景色を絵画のように切り取る「額縁」となり、外から見ればその家の印象を決める大切な「表情」となります。
だからこそ、窓は間取りが決まった後に、空いている壁へ適当に配置するものではありません。
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ソファやダイニングテーブルを置いたときに使いやすいか
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道路や隣家からの視線を遮れるか
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座ったときに窓の先へ木や空が見えるか
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外から見たときに、窓の高さが美しくそろっているか
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柱や耐力壁の位置と矛盾していないか
これらを平面、立面、断面から同時に考える必要があります。
「大きな窓をたくさん設ければ、明るく開放的になる」と考えられがちですが、必ずしもそうではありません。どれだけ大きな窓でも、外からの視線が気になって一日中カーテンを閉めてしまえば、その窓の価値は失われます。西日が入り過ぎれば夏の暑さにつながり、家具を置く壁がなくなれば、暮らしにくい空間にもなります。
大切なのは、窓の大きさではなく「位置」と「役割」です。光を取り入れる窓、風を通す窓、庭へ視線を導く窓、空だけを切り取る窓。それぞれの役割を明確にし、必要な場所に、必要な大きさで設けます。
私たちが設計の最初に「CAR&TREE(車と木の位置)」から考えるのもそのためです。敷地に対して、まず車をどこに停め、どこに木を植えるのか。建物を設計した後、余った場所へ適当に木を植えるのではありません。室内のどこから、どの木を眺めるのかを先に決め、その景色を最高に美しく切り取るために窓を配置します。
さらに、窓の上端や室内建具の高さをそろえることで、室内にも外観にも、視覚的なノイズのない美しい静けさが生まれます。
8.「見せる構造」と「隠す構造」
木造住宅の魅力の一つに、柱や梁を室内に露出させる「現し(あらわし)」という手法があります。本物の木の構造体が見える空間には、素材の温かさだけでなく、梁が屋根を受け止め、柱がその荷重を支える力強さがあります。
しかし、何でも見せれば美しくなるわけではありません。 どの梁を見せ、どの梁を天井裏へ隠すのか。見せる梁の高さをどこでそろえるのか。天井材と木部の接合部(納まり)をどう処理するのか。照明やエアコン、配線、配管をどのように整理するのか――。構造体を見せる設計ほど、実は細かな寸法や職人の技術が重要になります。
見せるべき構造は、主役として力強く見せる。一方で、配線や配管など空間の美しさを妨げるものは、丁寧に隠す。構造、設備、照明、インテリアを別々に考えるのではなく、最初から一体として整えることで、雑音のない心地よい空間が生まれます。
構造体は、単に家が倒れないように支えるためだけのものではありません。空間の広がり、天井の形、光と影の変化、木のリズムまでつくり出す、住宅デザインそのものなのです。
9.美しさは「線を減らすこと」から生まれる
街を歩いていると、どこか落ち着きがなく、まとまりに欠ける住宅を見かけることがあります。その原因の一つが、建物に現れる「線の多さ」です。
屋根、庇(ひさし)、窓、外壁の目地、素材の切り替え、雨樋(あまどい)、垂れ壁、換気フード、エアコンの化粧カバー、設備配管……。これらが共通のルールを持たずにバラバラに配置されると、建物全体がガチャガチャとした印象になってしまいます。
そこで私が大切にしているのが、徹底的な「引き算」です。
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屋根と庇のラインをそろえる
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窓のラインを一直線に整える
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設備配管を目立たない位置へ隠す
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外壁の素材や色を意味なく切り替えない
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使用する素材と色を必要最小限に絞る
美しい住宅は、何かを付け足して豪華に見せるものではありません。余計な線やノイズを限界まで減らすことで、屋根の形、軒の深さ、窓の配置、素材の質感といった、本当に見せたい建築本来の美しさが際立ちます。
本当に美しい家は、とても静かです。周囲に対して強く主張するのではなく、街並みや庭の緑になじみ、以前からそこに建っていたかのように静かに佇みます。
10.設計の標準化は、住宅の質を高める
注文住宅は、敷地の形や方位、周辺環境、家族構成、暮らし方が一棟ごとに異なります。そのため、配置や間取り、家族の居場所については、その敷地とご家族に合わせてゼロから深く考えなければなりません。
一方で、屋根勾配、軒の深さ、窓や建具の高さ、外壁と木部の納まり、柱や梁の基本寸法など、これまでの設計と施工経験から導き出された「より良い最適解」もあります。それらを会社独自の「標準仕様」として蓄積し、職人と共有していくことが大切です。
標準化とは、どの家も同じデザインにすることではありません。性能、耐久性、施工品質を高い水準で安定させ、設計や現場の無理・無駄・間違いを減らすための仕組みです。
基本部分のルールを最適化しておくことで、そこで生まれた時間とエネルギーを、そのご家族にとって本当に大切な場所の設計へ集中させることができます。
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庭へ心地よく開くリビング
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自然と家族が集まるダイニング
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ダイナミックで美しい構造体
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深い軒の下に広がるウッドデッキ(外と中を繋ぐ中間域)
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朝の光が優しく差し込む階段室、吹抜
建物のすべてを特別にするのではなく、暮らしを最も豊かにする場所を見極め、そこを圧倒的なクオリティでつくり込む。それが、私たちの考える工務店設計のあり方です。
まとめ
美しさは、家を長く残す力になる
私たちが細部までこだわり、美しい家を追求する理由は、設計者の自己満足ではありません。「人は、心から愛着を持てる美しいものを、長く大切にする」と考えているからです。
30年、50年経っても「やはりこの家は美しい」と思える住まいであれば、住まい手は手入れをしながら大切に住み続けます。そこで育った子どもたちも、この家を壊さず、次の世代へ残したいと感じるはずです。つまり、美しさは住宅の寿命を延ばす、持続可能な力でもあるのです。
耐震等級3、高断熱、高気密、高耐久といった性能は、これからの時代当然必要です。しかし、性能だけで家が長く残るわけではありません。年月が経っても愛着を失わない、普遍的な美しさがあって初めて、家は生き続けます。
美しい家には、美しい構造があります。 柱と梁を素直に組み、屋根を無理なく架け、軒を深く出し、建物の重心を低く抑える。窓と水平ラインを整え、必要以上に複雑な形や装飾に頼らない。こうした基本を丁寧に積み重ねることが、強さと美しさを両立させます。
美しさは、設計の最後に加える化粧ではありません。 敷地を読み、車と木の位置を決め、構造を組み立て、屋根の架け方を考える。その最初の瞬間から、すでに家の美しさは始まっています。
地震や台風に強く、年月を経るほど味わいを深め、鹿児島の風景の一部として静かに佇み続ける。それこそが、ベルハウジングが目指す「美しい家」の姿です。
一級建築士 松田英之
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ベルハウジングでは、高い耐震性能はもちろん、鹿児島の気候風土に調和し、年月を経ても美しい「引き算の住宅設計」をご提案しています。
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「地震や台風に強く、デザインも美しい家に住みたい」
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「敷地のポテンシャルを最大限に活かした設計をしてほしい」
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「流行に左右されず、長く愛着を持てる住まいをつくりたい」
どんな小さなことでも構いません。まずはあなたの理想の暮らしをお聞かせください。
日本の木造建築の基準や構造に関する詳細は、国土交通省の公式ウェブサイトなどもご参照ください。
